事例:事前対策(遺言、民事信託、生命保険の活用)
●2018年事例
依頼者:淀川区 Aさん(65才)
相続予定人:長男、二男
※20年以上同居の内縁の妻がいる
現状把握
1、資産内容
・総資産:約2.7億円(不動産の占める割合約80%)
賃貸マンション1棟、立体駐車場、区分マンション、リゾートマンション、山林、預貯金
・債務:約1.3億円(アパートローン)
2、悩み・課題点
①20年以上同居している内縁の妻への対策
・内縁の妻へ老後資金として、金融資産を渡したい。
②障がいを持つお子さんへの資産承継対策
・経営判断の伴う賃貸不動産は二男。
・軽度の障がいのある長男には、相続時に多額のお金を渡すのではなく、長期間にわたり、一定額を渡していき生活に困らないようにしたい。
③納税への不安
・金融機関から駐車場に倉庫兼事務所にする節税提案を受けているが、本当に大丈夫か?
・納税資金を確保して、子どもに迷惑をかけたくない
3、相続税試算(税理士タイアップ)
・課税遺産総額:約9500万円
・相続税額(特例除外):現時点で約1500万円
相続対策
①内縁の妻への対策
通常、内縁の妻には法定相続分が無いが、終身保険を使い、内縁の妻へ保険金を渡すスキームを使用。
被保険者:Aさん 、支払い者:Aさん 、受取人:内縁の妻
②軽度の障がいを持つ長男への資産承継
相続で、多額の資産を一度に渡さずに、一定額を毎月、定期的に渡していく仕組みをとりたいとのこと。
賃貸マンションを信託して、受益権を相続してもらい、賃料収入の一部を渡すスキームを検討し、抵当権設定を行っている銀行と折衝しましたが、信託不可との回答で、断念しました。
そこで、金銭信託(民事信託)で定期的に長男に現金を渡していくスキームとしました。一般社団法人を立ち上げ受託者とし、当初の受益者はAさん。Aさんが没後、受益権は長男に承継するという遺言代用も兼ねています。
③公正証書遺言
二男さんに賃貸不動産を集約させたいことから、公正証書遺言作成。
④納税資金の確保
税理士さんに相続税の試算をして頂き、現時点での相続税の提示を行いました。
そして、返済期間を5年延長することで、相続税額を抑えることが出来る旨のシミュレーションを提案することで、返済期間延長の承諾をもらいました。
これにより、年間約400万のCFを手元に残すことが出来ました。
⑤賃貸物件建築で節税を図る手法の検証
金融機関より、駐車場に倉庫兼事務所(一括借上げ)で建てて、節税するスキームの提案を受けていたので、検証することとしました。
駐車場の賃貸純収入(経費差引後)は、約900万。
借入は無いので、丸々、現金として残ります。
【倉庫兼事務所を建築した場合】
●解体+建築総投資額=約9000万円(税込)
●借入9000万円 / 25年 / 金利1%
年間返済額:約407万円
EGI(実行総収入)1100万
OPEX(経費) ▲240万
NOI(賃貸純収入) 860万
ADS(年間返済額)-407万
BTCF(税引き前) 413万
貸倉庫建築で相続税評価を下げれても、CFが年間500万減る
現況の駐車場は自走式駐車場のため、収容台数が多く、稼働率も90%となっています。また、借入も無く、経費も少ないことから賃貸純収入が900万あります。
土地(相続税評価額)に対してのROAは、12%と高い利回りを保っています。
相続対策で、倉庫兼事務所を建築して相続税評価額を下げれても、現状のCFよりも年間約500万ダウンとなるのであれば、やらない方が良いということで、見送ることにしました。
相続に不安を持たれていた中で、金融機関から提案を受け、建築を考えていましたが、数字を持って提案したことで、より理解が深まり、駐車場のままで収入を得ていく方が良い選択だと分かって頂き、大変、喜んで頂きました。
今後の対策としては、駐車場収入から納税資金を確保しながら、借入金の返済が進み、相続税がUPするタイミングを見て、収益物件の購入や生前贈与を使い、対策を実施していく予定です。